擁壁・がけ地改修のスペシャリスト|カヌカデザイン事務所

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代表的な宅地擁壁の改修・補強事例
 

代表的な宅地擁壁の改修・補強事例

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1) 施工例1:崩壊した2段擁壁の補修工事
  『Y市の宅地A』
2) 施工例2:K市の補強工事例
   『K市の宅地B』
3) 施工例3:O市の改修工事例
   『O市の宅地C』 
4) 施工例4:M市の補強工事例
   『M市の宅地D』
5) 施工例5:Y市の既存擁壁を活用した補強工事
   『Y市の宅地E』

宅地擁壁は,防災安全上からもしっかりと設計・施工されるべきであるが,昭和中期以前の宅地擁壁は,設計時の思想が曖昧なため,地震や台風などの災害時に,崩落・崩壊などの被害を生じる危険性を有するものが多い。また,近年では,宅地擁壁にも周囲環境に配慮した美観や土地の有効活用のための形状が要求されるようになってきた。日本都市部の地形は,丘陵地が多く,斜面を利用した雛壇状の宅地が多く存在している。これらに設置された擁壁のほとんどは,自然石を加工した間知石積み,大谷石を使用した石積み擁壁であるが,十分な排水機構を伴わないものも多い。また,度重なる造成工事による二段積みの擁壁も多く存在し,長期の降雨時や大地震時などに崩壊の危険性を有するものもある。本報告では,構造・耐震性能,周囲環境,経済性などに配慮し、これに基づいて施工した宅地擁壁の改修・補強事例を紹介する。 また、改修・補強・築造替え等にあたって事前に国交省「宅地擁壁老朽化判定マニュアル ( 案 ) 」の「擁壁・がけ調査票」及び「既存擁壁外観チェックシート」で調査を行った。その結果、やや不安定な宅地擁壁(総評点 5.0 点以上 9.0 未満)と危険性が高い宅地擁壁(総評点 9.0 以上)ついて施工した。工事完了時に、宅地擁壁(擁壁高さ 2 m未満は除く。 ) の完了検査を受けたものである。


宅地擁壁の危険度評価区分
点数の
最大値
危険度
評価区分
評価内容
5.0点未満
小さなクラック等の障害について補修し、雨水の浸透を防止すれば、当面の危険性はないと考えられる宅地擁壁である。
5.0点以上〜 9.0点未満
変状程度の著しい宅地擁壁であるが、経過観察で対応し、変状が進行性のものとなった 場合は 継続的に点検を行うものとする。また、必要がある場合は変状等の内容及び規模により、必要に応じて勧告・改善命令の発令を検討し、防災工事の必要性についても検討を行う必要がある。
9.0点以上
変状等の程度が特に顕著で、危険な宅地擁壁である。早急に所有者等に対しての勧告・改善命令の発令を検討する必要があり、防災工事を行うとともに、周辺に被害を及ぼさないよう指導する。
国土交通省 都市・地域整備局 都市計画課 宅地擁壁老朽化判定マニュアル ( 案 ) より

1)施工例1:崩壊した2段擁壁の補修工事 『Y市の宅地 A 』

Y市の宅地 A は,下段は昭和初期に築造した自然石の間知積み,上段が 戦後に 造成した下部が自然石、上部が大谷石積みの2段擁壁であるが,平成 16年10月台風 22 ・ 23 号によって上段・下段ともに擁壁が崩壊した(写真‐1)。崩壊の原因は,擁壁基礎の地耐力不足、また上段の擁壁の排水機構が十分に機能せず,背面土の土中含水が飽和状態となったためと考えられる。
施主の希望  既存建物の損傷は生じておらず,これを解体せずに補修工事を行うこと
問題点 @ 底版基礎部での支持力は 150 kN/u 程度であり直接基礎での擁壁築造は困難
      A 接道部分が階段であり幅も狭いため一般的な重機を使用した施工ができない
解決策 
標準貫入試験( SPT )と孔内水平載荷試験 (LLT) の結果,KBM−11.35m に N > 50 の支持層があることと,杭頭部 KBM‐1.55mでの十分な 変形係数( E=8085kN/u )が確認されたため,下図に示すように,φ165.2 の小径鋼管杭を用いた2点支持式の擁壁を新規に築造。施工に際し小型のボーリングマシーンしか使用できないため、基礎杭を小口径鋼管杭にする。 現場の状況から 4 ヶ月程度の工期を要したが,風致地区にも適用する仕上がりの良い擁壁を築造する事ができた。

断面図
 
基礎伏図


2)施工例2:K市の補強工事例 『K市の宅地B』

K市の宅地Bは,高さ約2 m の逆L型擁壁を用するところであったが地耐力不足と擁壁前面は勾配の急な自然土の法面(高低差2m)となっており,降雨時や地震時の崩壊が危惧される。そこで,既存擁壁の前面 1.9mに山留め壁を兼ねた自立型擁壁を新規に築造する補強工事を実施した。
新規擁壁の築造手順
新規擁壁の築造手順@
新規擁壁の築造手順A
手順1.長さL=6mの小径口鋼管(φ 165.2 mm)を1m間隔で圧入し(写真− 5 ),縦矢板を挿入した後にL型鋼( 50 × 50 )で緊結する ( 写真− 5 ・写真− 6) 。
手順2.鋼管の外部 ( 前後 ) に鉄筋を縦・横配筋し( D13@200 ダブル),コンクリートを打設して厚さ t = 35 pの自立型擁壁を構築した。なお,鋼管内部にもコンクリートを打設することで剛性を高め、構造上の余裕度を確保した(コンファイン効果)。
メリット 
この工法は、山留を兼ねた自立型擁壁である。従来の片持ち擁壁などと比較すれば、
土工事、作業効率、コストダウンが計れる。また、地盤が悪いところでも施工可能である。


3)施工例3:O市の改修工事例 『O市の宅地 C 』

O市の宅地Cは, 石積み二段擁壁を有するが,この擁壁は戦後に構築されたものであるが,
現行の建築基準法既存不適格であるため,早急な改修工事が必要であった。
当初案 断面図 実施案 断面図
当初は上図に示すような高さ約H= 5.0 mのL型擁壁を計画していたが,地盤調査の結果,底版面の地盤が軟弱であり不同沈下を生じる危険性が判明した。そこで,施工例1と同様の2点支持型の擁壁を新規に築造することにした。擁壁前面の基礎には、現場造成杭φ 700mm 、根入れ長 10,000mm の場所打ちコンクリート杭を約 2,850mm ピッチで打設し、その上に 600mm × 600mm の RC 柱を築造して、柱間に厚さt =250mm の壁を連結し打設した。擁壁背面側には背面梁(つなぎ梁 :FG2 )を設け、それらを高剛性の基礎 ( FG1: 断面寸法 1,000X1,500) と連結した。


4)施工例4 :M市の補強工事例  『M市の宅地D』

M市の宅地Eは, 高さ 2 mの 増し 積み擁壁で下部が玉石積み擁壁 ,
上部がコンクリートブロック構成されている平成 19 年 6 月 20 日以前の建物であった。
  問題点
建物の検査を改正後行ったが の断面図のように増し積みの擁壁に負担する基礎であったため検査済書降りない。
解決策
補強案として擁壁を補強するか、あるいは建物の基礎を補強するかの2つの案が考えられる。そこで道路境界線より約 100mm程度離して増し積み擁壁の補強を行った。全体を壊さずに下部の玉石積みの一部を解体しそこに小口径鋼管杭165.2 Φを1500mm ピッチ,長さ L=6.0m 杭を打ち , 鋼管の両外側に鉄筋 D13@200 を縦・横筋ダブル配筋した。型枠をし、コンクリート壁 (t=350) を打設した。

5)施工例5:Y市の既存擁壁を活用した補強工事  『Y市の宅地 E 』

Y市の宅地Eでは,写真‐ 12 に示したように, 平成 7 年に築造した,高さ 5 m の間知積み擁壁を有している。施主の希望は,老朽化した擁壁の補修と,宅地敷地の有効利用(拡張)である。標準貫入試験の結果,既存の間知石積み擁壁の基礎下では 300kN/u の十分な地耐力を確認できた。

断面図 本工法の考え方

解決策
上記断面図に 示すように間知積みの擁壁を残置したまま,直接基礎による2点支持式の直立擁壁を築造することとした。このケースは、既存間知積みの擁壁に極力負担を掛けない構造計画をした。本補強工事によって,擁壁上面の宅地面積 は約 65 u (約 20 坪) 増加し,敷地の有効利用にも寄与することができた。


参考文献   1)「地盤調査法」平成 15年度より(社団法人地盤工学会)  2)「地震力に対する建築物の基礎の設計指針付・設計例題」(日本建築センター)  3)「宅地擁壁復旧技術マニュアルの解説」(旧建設省建設経済局民間宅地指導室)  4)「横浜市斜面地建築物 技術指針」(横浜市建築局建築審査)  5)「建築基礎構造設計指針」(日本建築学会)  6)「道路橋示方書・〃解説」( (社)日本道路協会)  7)田村昌仁:建築物の基礎および敷地の耐震診断と耐震改修 基礎工 2006.10  8)我が家の擁壁チェックシート ( 案 )  国土交通省  9)宅地地盤の安全性と性能評価に関するシンポジウム  平成 17 年 7 月 社団法人地盤工学会